ごま油とマヨネーズで吸収力を高める

 きゅうりに多く含まれる「βカロチン」にも注目だ。 「βカロチンは体内でビタミンA系に変化します。ビタミンA系はスルフォラファンと同じく酸化ストレスを抑える抗酸化物質で、免疫力を上げる作用があります」(中村さん)

 きゅうりなどのウリ科野菜に含まれる「ククルビタシン」という苦みの成分がある。麻生さんが言う。 「ククルビタシンは中毒作用があるぐらいに、人体に強く作用します。特に強い抗炎症作用で知られ、抗がん作用も注目されています。また、血糖値を下げる働きがあるとされます」  きゅうりもキャベツと同じく、生で食べるといいと中村さんは言う。 「βカロチンは脂溶性なので、油と一緒に食べるとなおいいです。ごま油で和えたり、マヨネーズをつけたりしてください」




7月17日、世界的な医学論文公開サイト「medRxiv(メドアーカイブ)」に新たな研究結果が発表された。 《欧州各国の野菜摂取と新型コロナウイルス死亡率の相関関係について》  WHO傘下の世界呼吸器疾病連盟元会長で、仏モンペリエ大学医学部名誉教授のジャン・ブスケ氏らが欧州各国を対象に調査をしたところ、キャベツを食べる量が1日1g増えると死亡リスクが13.6%下がった。きゅうりを食べた場合は15.7%も低下する可能性があるという。

熱を加えず「生」で食べる方がいい

「虎の門中村康宏クリニック」院長の中村康宏さんは、「キャベツに多く含まれる『スルフォラファン』という植物由来の成分が関係している」と解説する。 「スルフォラファンは抗酸化力が高く、『酸化ストレス』という体内の炎症を抑える働きが期待できます」  呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、より活性の高い「活性酸素」に変わり、さまざまな生体活動に使われる。しかし、その活性酸素が体内で過剰になると、細胞を傷つけ、老化やがん、心血管疾患や生活習慣病などの原因にもなる。それを酸化ストレスと呼ぶ。 「酸化ストレスにより、体内に侵入したウイルスなどの異物を排除する免疫力も弱まるとされます。赤ワインやチョコレートなどに含まれるポリフェノールや、キャベツやブロッコリーなどに含まれるスルフォラファンには、酸化ストレスを抑える機能があるので、適度に摂取することにより、免疫力を維持することにつながり、ウイルス感染や重症化を防ぐと考えられます」(中村さん)

 管理栄養士の麻生れいみさんが続ける。 「新型コロナは人間の免疫細胞を破壊して、免疫システムを効かなくさせる可能性が指摘されています。同じように免疫システムを攻撃するウイルスに、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)があります。スルフォラファンはHIV感染を抑制すると解明されており、新型コロナにも同様の働きをすると期待されます」  ほかには腸内環境を整える効果があるという。 「免疫力を下げないためには、免疫細胞の8割が集まる腸内環境を整えることが大切です。スルフォラファンは腸内の善玉菌のエサになるので、腸内環境を正常に保ちます」(麻生さん)  スルフォラファンはキャベツをはじめ、大根、ブロッコリー、ブロッコリースプラウト(新芽)、カリフラワー、菜の花など、アブラナ科の野菜に多く含まれる。効果的に摂取するには生食がいいと麻生さんは言う。 「スルフォラファンは、かんだり刻んだりして野菜の細胞が壊れたとき、同じくアブラナ科野菜に含まれる酵素『ミロシナーゼ』と出合って初めて生成されます。ミロシナーゼは加熱に弱いので、効率よくスルフォラファンを摂取するには生で食べるのがいい。加熱が必要なブロッコリーの場合は、千切りキャベツなど生のアブラナ科野菜と食べ合わせてください」